相続手続きあれこれ 家庭裁判所編 | 絶対に失敗しない相続対策 元木司法書士事務所備忘録   

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相続手続全般

相続手続きあれこれ 2回目 家庭裁判所編-相続放棄には期限があります

投稿日:2020年9月2日 更新日:

相続手続きにおいて家庭裁判所の手続きは、とても大事で重要なものになります。

よく知られているものとしては、相続放棄の申述、自筆証書遺言の検認、遺産分割調停、他にも限定承認や失踪宣告など、相続手続きに影響を及ぼすものがたくさんあります。

 

実際によくある相続放棄、自筆証書遺言の検認、遺産分割調停について順番に解説していきます。

この記事の目次

相続放棄と遺産放棄の違い

「放棄をします」とお客様からお話をうかがうことが多いのですが、放棄の意味合いには家庭裁判所の手続きにおける【相続放棄】と相続人同士の話し合いの中で【遺産放棄】することの2種類あります。一般の方はこの2種類の放棄を理解して話されるケースは多くはありません。この2つの放棄は法律上の効力が全く異なりますので要注意です。

【相続放棄】とは家庭裁判所における手続きになります。相続の開始があったことを知ってから3カ月以内に手続きを行う必要があります。手続きを行うところは被相続人の最後の住所地の家庭裁判所となります。この手続きのことを【相続放棄の申述】といいます。

一方で【遺産の放棄】については相続放棄のように期限はなく、いつ、どこで行っても大丈夫です。

また、【相続放棄】は法律上の用語ではありますが、【遺産の放棄】は法律上の用語ではありません。【相続放棄】をすると被相続人の債権者から支払いの請求を受けても拒否できますが、【遺産の放棄】をした場合には債権者からの請求を受けても拒否できません。

相続放棄とは

相続が発生した場合、相続人は次の三つの選択肢があります。

  1. 相続人が被相続人の不動産、預貯金、借金等の権利義務をすべて受け継ぐ単純承認
  2. 相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
  3. 被相続人の債務がどの程度あるか不明で、財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認

相続放棄とは相続人が相続開始を知った時から3カ月以内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、相続放棄する旨の申述をすることによって法律上の効果が発生します。この点においては、遺産放棄はいつでもどこでも出来るのと異なり、厳格な手続きが必要となっています。

法律上の効力も相続放棄をすると権利も義務も一切承継しませんので、被相続人の債権者から支払いの請求を受けても支払い拒否することが可能です。

一方、遺産放棄の場合には、財産を相続しないということになったとしても、被相続人の債権者から支払いの請求を受けると支払い拒否することはできません。

相続放棄よくある質問

 

Q 被相続人の借金がいくらあるのか不明でも相続放棄できますか?

A 可能です。相続放棄とは個別の財産を放棄することではなく、相続人の地位から外れる意味合いがあります。放棄をするとはじめから相続人ではなかったことになります。

 


 

Q 自分が幼いころに離婚した両親、別れた父親の死亡の通知が亡くなってから半年後に届いた。3カ月経過しているが相続放棄できるますか?

A 可能です。相続放棄は自己のために相続が開始したことを知ったときから3カ月以内に相続放棄の申述をすれば大丈夫です。


 

Q 兄弟に内緒でも相続放棄できますか?

A 相続放棄は相続人お一人からでも放棄をすることができます。遺産相分割協議の煩わしさ、親族間での遺産争いに関わりたくない、という理由でも相続放棄をすることは可能です。


 

相続放棄の注意点

・相続が発生する前には相続放棄できません。

・相続放棄を検討している場合に被相続人の財産を消費したり、受け取ったりしてはいけません。                                         →被相続人の預貯金を引き出したり、タンス預金を勝手に使用したりする行為は処分行為となるため、相続放棄をすることができなくなります。もし、被相続人の借金の取り立てが来た時には、支払っていいのかどうか考えましょう。相続人の立場として支払ったのであれば借金を相続したとみなされる可能性があります。

・葬儀費用の支払いなどを被相続人の財産で行いたい場合などにも一定の注意が必要です。

・被相続人のアパートなどの賃貸借契約についても空き家になったからといって、勝手に家の中の動産を処分してはいけません。

 

相続放棄必要書類

【費用】

1.収入印紙が放棄する方一人あたり800円

2.切手(裁判所による)

【必要書類】以下のとおり

【共通】

1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票

2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本

【申述人が,被相続人の配偶者の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

6. 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

申し立てをする家庭裁判所

1.被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

 

自筆証書遺言の検認

2020年7月10日から自筆証書遺言の法務局での保管制度がスタートしました。それ以前に自筆証書遺言を作成されてそのまま自宅などで保管されていたり、法務局での保管制度を利用していない自筆証書の遺言書が新たに出てきたときには家庭裁判所において検認手続きをする必要があります。

検認手続きとは、遺言書のの存在や内容を相続人に知らせ、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言書の有効・無効を判断する手続きではなく、後日裁判で遺言書が無効になる可能性がある、ということがポイントになります。

自筆証書遺言の検認手続きのよくある質問

Q 検認手続きに必ず出席しなければいけないでしょうか?

A 遺言書の保管者は必ず出席する必要がありますが、他の相続人は必ず出席しなければならない、ということはありません。


 

Q 自筆証書遺言の検認手続きは誰がするのでしょうか?

A 自筆証書遺言の保管者または遺言書を発見した相続人が申し立てる必要があります。


 

自筆証書遺言の検認手続き注意点

1.検認手続きを受けずに遺言書を開封すると「5万円以下の過料」の対象になります。

2.検認手続きを受けずに不動産の名義変更、預貯金等の解約、払い出しはできません。

3.自筆証書遺言が存在することを隠したり、破棄、偽造してしまったりすると相続欠格事由に該当します。

 

自筆証書遺言検認手続きの必要書類

【費用】

1.収入印紙 800円と150円

【必要書類】

1.自筆の遺言書

2.印鑑

3.以下のとおり

【共通】

1. 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

2. 相続人全員の戸籍謄本

3. 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】

4. 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【相続人が不存在の場合,遺言者の配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】

4. 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

6. 遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

7. 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

申し立てをする家庭裁判所

1.被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

 

 

遺産分割調停

被相続人が死亡して、相続人同士が遺産分割について話合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割調停の手続きを進めることになります。

遺産分割調停においては調停委員がお互いの意見を聞いて解決策や妥協案を探す手伝いをしてくれます。

裁判所の手続きになりますので、一般の方は最初は敷居が高く感じられる方が多いのですが、調停委員の方が相続人の間に入って話をしてくれます。相続人同士が同じで部屋で言い争うということもなく、進みます。相続人同士が特に仲が悪い、関係がよくない、という事情がある場合には同じ部屋ではなく別室で調停委員が話を聞いてくれます。

色々な解決策、妥協案を提示しても、相続人同士が合意に至らない場合には、遺産分割の調停は成立しません。

成立しない場合には審判に移行します。審判に移行した場合には裁判所において様々な事情を考慮して調停に代わる審判がされます。

遺産分割調停のよくある質問

Q 平日は仕事なので土日祝日にも調停期日を設定してくれますか?

A 平日にしか調停期日は設定されません。お仕事を休んでいただくか、弁護士に依頼していただくことになります。


 

Q 法律用語がわからないのですが、大丈夫でしょうか?

A 遺産分割をする内容にもよりますが、遺産がマイホームと預貯金、わずかな現金だけということであれば、一般の方でも問題ないと思います。ただし、【名義預金】がからんできたり、【特別受益】や【寄与分】の主張がされたりすると、一般の方では難しくなるかもしれません。事前に専門家のサポートを受けたほういいかもしれません。


 

遺産分割調停の注意点

・遺産分割調停のなかでは、お互いの妥協案を探したり、解決策を探すことになりますので、自分の希望と異なる内容の調停になる可能性があります。

・調停期日一回目で成立することは少ないので時間がかかります。一回目で調停が成立するということは、そもそも遺産分割の話し合いにたいした障害がなかった、ということです。通常の話し合いがまとまらないので遺産分割調停を申し立てるケースがほとんどですので、複数回は家庭裁判所に出向くつもりでいたほうが正解です。調停は一カ月に一度のペースで調停期日が設定されて、半年から一年ぐらいかけて調停が終わることが多いと思います。

・自分で調停を進めるには事前に専門家のサポートを受けたほうがいいでしょう。

遺産分割調停必要書類

【費用】

1.収入印紙 被相続人一人あたり1200円

2.切手(裁判所による)

【必要書類】以下のとおり

1.被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

2.相続人全員の戸籍謄本

3.被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4.相続人全員の住民票又は戸籍附票

5.遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書,預貯金通帳の写し又は残高証明書,有価証券写し等)

・相続人が,被相続人の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合

6.被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・相続人が,被相続人の配偶者のみの場合,又は被相続人の(配偶者と)兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合

7.被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

8.被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

9.被相続人の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

10.代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

申し立てをする家庭裁判所

1.相続人の中で相手方とする一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所

 

まとめ

相続が発生した場面の家庭裁判所における手続きを説明しました。いずれも手続きの有効期限や書類の有効期限、書類の取り寄せ方法、手続きの仕方、注意点など押さえておかなければならないことがたくさんあります。すべてをご自身で抱え込むのではなく、専門家の良きサポートを受けながら手続きを進めていきましょう。

 

 

 

 

 

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