相続が発生した場合の法務局における手続きは、以下のように重要なものがあります。不動産の相続登記だけではありません。
不動産の名義変更(相続登記)
会社役員の変更登記
法定相続情報一覧図の作成
成年後見人の終了の登記
このように不動産の名義変更だけでなく、色々とありますので順番に解説していきます。
この記事の目次
不動産の名義変更
最近は、不動産の名義変更をご自分でされる方が増えてきましたが、不動産の個数が多い、相続税の申告期限がある、平日に休めないなど、やはり、専門家に依頼される方は非常に多いです。相続登記にはいくつかのパターンがあります。
遺産分割による相続登記
複数の相続人がいる場合には、相続人全員で遺産分割協議を行って、誰か一人が不動産を相続をする、というケースが一番多いです。注意しなければいけないのが、相続人全員で話し合いが成立しないと有効な遺産分割協議は作成できません。誰か一人でも、外国に行ってる、刑務所に収監されている、行方不明者がいるなど事情があったとしても理由にはなりません。
先に亡くなっている子供がいた場合には、その子供も相続人として遺産分割協議に参加する必要があります。未成年者が相続人である場合には親権者が代わりに(ケースによっては家庭裁判所で特別代理人の選任が必要)遺産分割協議に参加して、遺産分割協議書に署名捺印することになります。
遺産分割協議書と被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人の住民票、印鑑証明書、戸籍謄本、不動産の評価証明書を添付して名義変更をします。
法定相続分による共有名義で相続登記
専門家の意見としては法定相続により共有名義で登記を行って、そのまま置いておく、というのはあまりお勧めすることはありません。理由としては、相続人が複数名いて、二次相続が発生すると不動産の名義人が増えてしまうことが考えられます。
例えばこの家族構成でおじいさんが不動産の所有者でおじいさんが死亡すると相続人はおばあさん(妻)と長男(子)、二男(子)、長女(子)となります。
長男は結婚して子供がいます。法定相続により登記手続きをすると、おばあさんが持分6分の3、長男6分の1,二男6分の1、長女6分の1と登記されることになります。
ただし、以下の点に注意してください。
法定相続分で相続登記をしてすぐに売却するのであれば特に問題はありませんが、売却せずにそのまま所有しておくとなると、いずれ、二男も結婚、長女も結婚するかもしれません。そして、子供が生まれたあとに長男や二男や長女に相続が発生すると一つの不動産に複数の相続人の名義が入ることになります。不動産を活用したくても不動産の名義人が多ければ多いほど、足並みがそろいにくくなり、名義人の意思統一が難しくなります。
不動産の名義人が多いほど、不動産の活用や売却がむずかしくなり、長期間放置されてしまう傾向があります。
一つの不動産を共有名義のままにして長期間おいておくリスクが理解出来ると思います。
遺言書による相続登記
「京都府宇治市□□□100番地の土地を相続人Aに相続させる」と記載されている有効な遺言書があった場合には、Aは遺言書に基づいて相続登記をすることが出来ます。その際、他の相続人の印鑑や印鑑証明書など無くても名義変更が出来るようになっています。
他にも
「私の全財産を妻Bに相続させる」と財産が特定されていなくても、Bは遺言書に基づいて名義変更が出来るようになっています。
遺言書は自筆証書遺言、公正証書遺言のどちらでも相続登記の手続きは可能です。ただし、自筆証書遺言は検認手続き終了分、もしくは法務局における保管制度を利用した遺言情報証明書が必要です。
会社の役員の変更登記
会社の役員(取締役、監査役、代表取締役)になっている方が死亡した時にも法務局において登記手続きが必要となります。
株式会社で取締役が死亡した場合には、以下のとおりの書類が必要となります。
・遺族から会社に対しての死亡届
・取締役死亡の記載のある戸籍謄本
その株式会社が取締役会設置会社であって、取締役三名中の一人が死亡した場合には株主総会で新たな取締役を選任しなければなりません。
その場合には株主総会議事録や新たに就任した取締役の就任承諾書なども必要となります。
法定相続情報一覧図の作成
法定相続情報一覧図とは被相続人の法定相続人の情報をA4にまとめた図面です。相続人の人数が少なければ一枚でまとまりますし、数次相続や代襲相続が発生している場合には複数枚にわたるケースもあります。筆者の事務所においても21人の相続人の相続手続きの際に法定相続情報一覧図が5枚もので発行されてきました。作成するのに手間と時間がかかりますが、一度作成してしまうと5年間は法務局から無料で発行してもらうことが出来ます。この法定相続情報一覧図は非常に使い勝手がよく、銀行や法務局で名義変更の手続きをする際に、戸籍の束の代わりに提出することが出来ます。つまり、複数枚発行してもらっておくことで、複数の金融機関や法務局の手続きを同時に進めることが出来る大変便利な書類です。
法定相続情報一覧図を取得するには以下の書類が必要となります。
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
・被相続人の住民票除票
・相続人の戸籍謄本(抄本でも可)・住民票
・相続人の公的証明書のコピー(運転免許証やマイナンバーカード)に原本証明をしたもの
成年後見等終了の登記
被相続人が認知症等で成年後見制度を利用していた場合には、死亡後に成年後見終了の登記申請をする必要があります。
添付書類は死亡診断書のコピーまたは戸籍謄抄本となっています。手続き自体は非常に簡単ですが、東京法務局に申請書を提出する必要があります。
東京法務局の提出先
〒102-8226 東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎
東京法務局民事行政部後見登録課
電話番号03-5213-1360
郵送で申請できます。
まとめ
相続における法務局の手続きについて解説しました。個別事案により他の書類が必要になることもあります。専門家の意見を参考に手続きを早め早めに済ませていきましょう。相続手続きは放置していいことは一つもありません。次の世代にスムーズに財産を承継していくこと、必要な手続きをスムーズに済ませることが何より大事です。