前回までの「相続についてどこまで知ってる?相続の基礎知識 法定相続人と法定相続分の関係」と「どこまで知ってますか?相続の基礎知識」
で相続の基礎知識について2回にわたり解説いたしました。いかがでしょうか、少し複雑でむずかしかったかもしれません。
本日は、引き続き「相続の基礎知識」、テーマとしては数次相続と代襲相続について解説したいと思います。
この記事の目次
数次相続
数次相続とは、よく実際の案件でもありますが、父親が亡くなり、その後に母親も亡くなった。これが数次相続です。
非常に簡単です。
こんなケースも祖父が亡くなり、その後に祖父の子供である父親が亡くなった。
これも数次相続ですね。
実務上、数次相続の場合、専門家は非常に気をつけています。どういうことかと言いますと、相続人の人数が非常に多くなることが多いんですね。
例えば、以下の事例をご覧下さい。
数次相続の事例
このケース、2度の数次相続が発生しています。被相続人圭介の相続人は誰になるか分かりますでしょうか。
答えは 「花子」、「一郎」、そして「次郎」の3人になります。
順番に見ますと8月1日に圭介が死亡した事により、その時点の相続人は、亡良子、亡太郎、次郎の3名です。
何も手続きをしないまま、続いて8月2日に良子が死亡してしまいましたので、良子の相続人は亡太郎と次郎の2名です。
最後に8月3日に太郎が死亡した事による相続人は花子と一郎の2名です。
なので、圭介の相続人は「亡」が付いていない人になりますので、次郎、花子、一郎の3名となります
日本の相続は「相続する権利」をも相続する事が出来ますので、太郎が死亡した事によって、太郎が「圭介と良子について相続する権利」を花子と一郎が相続した、と考えます。
このように、相続手続きを放っておくと、案件によっては、「こんな人が相続人になるの」、というケースもあります。
専門家は、数次相続の案件は、非常に気をつける、という理由がおわかりになったかと思います。
実際、元木司法書士事務所にご相談いただいた方も、相続人が多すぎて遺産分割協議がまとまらない、というお客様が現実にいらっしゃいます。
続いて、代襲相続について解説いたします
代襲相続
代襲相続とは元々相続人になる予定であった者が、被相続人の相続開始前に死亡してしまった場合、その者の子がその者に代わり相続する事になります。このことを代襲相続といいます。
数次相続とよく似ていますが、相続開始後にその相続人が死亡するのが数次相続で、相続開始前に死亡するのが代襲相続と理解して下さい。
事例を見てみましょう。先ほどの数次相続の事例と家族構成は一緒にしました。
代襲相続の事例
このケースでは被相続人圭介の相続人は誰になるのか分かりますでしょうか。
答えは 「一郎」と「三郎」の2人になります
順番に見ますと8月1日に圭介が死亡した事により、その時点の相続人は、亡良子、亡太郎はすでに死亡してしまってましたので「一郎」、亡次郎もすでに死亡してしまいましたので「三郎」となります。
そして、8月2日に良子が死亡しましたので、その相続人は圭介と一緒で亡太郎はすでに死亡してしまってましたので「一郎」、亡次郎もすでに死亡してしまっていましたので「三郎」となります。
一郎と三郎は、ランドセルを背負っていますので、未成年者であれば法定代理人が未成年者に代わり、遺産分割協議をする、ということになります。
というように、相続手続において、相続人を確定する作業は、非常に神経を使う作業となります。
一日でも先に死亡していたら、全く違う人が相続人となる可能性があるからです。
では、最後に数次相続と代襲相続が、ミックスされたらいかがでしょうか。
事例を見て下さい。
数次相続と代襲相続の両方が発生している事例
このケース、被相続人圭介の相続人は誰でしょうか。
そうです、答えは「一郎」、「菜々子」、「三郎」の3名です。
正解されました方は、本当にすばらしい。「パチパチパチ」拍手いたします
順番に見ますと8月1日に圭介が死亡した事により、その時点の相続人は、亡良子、亡太郎はすでに死亡してしまってましたので「一郎」が代襲相続人です。そして、亡次郎が相続人です。
8月3日に次郎が死亡した事による相続人は菜々子と三郎の2名です
そして、一般の方が見落としやすいのが、
圭介の妻良子も8月2日に死亡している事実です。
では、良子の相続人は誰になるか、というと一郎が代襲相続人、菜々子と三郎が数次相続人となります。
良子の死亡事実を見落とすとどういうことが考えられるか
遺産分割協議の場合には、全く問題はありません。
しかし、法定相続する場合に、影響があります。
良子は圭介の妻(配偶者)ですので2分の1の法定相続分があります
残りの2分の1を太郎の代襲相続人である一郎
と子次郎が相続します
圭介の相続による法定相続分は以下のようになります
亡良子持分2分の1(8分の4)
一郎持分8分の2
亡次郎持分8分の2
そして、良子が死亡しましたので良子の持分2分の1は以下のように相続分があります
一郎持分8分の2
次郎持分8分の2
最後に次郎が死亡しましたので
菜々子が8分の2
三郎も8分の2
最終的に合計しますと法定相続の場合には
一郎が全体の8分の4
菜々子全体の8分の2
三郎全体の8分の2
これが法定相続分となります
必ず、良子の死亡による法定相続分を計算しましょう。しないと、法定相続分がくるってくるケースがでてきますよ。
どういうことか、見ておきましょう
良子の死亡日が8月4日であった場合には、大きくかわります
順番に見ますと8月1日に圭介が死亡した事により、その時点の相続人は、亡良子、亡太郎はすでに死亡してしまってましたので「一郎」が代襲相続人です。
圭介死亡による法定相続分
良子2分の1(8分の4)
一郎8分の2
次郎8分の2
次郎死亡した事による法定相続分は
菜々子8分の1
三郎8分の1
最後に良子が死亡しましたので、その相続人は「一郎」と「三郎」の二人になります
二人とも代襲相続人として良子の相続人になります。
法定相続分は
一郎8分の2
三郎8分の2
最終的に合計すると
一郎8分の4
菜々子8分の1
三郎8分の3
となります
ややこしいですね。
ここまでの話についてこられた方は本当にすごいですよ。
最後までご覧頂きましてありがとうございました。