今回は相続放棄について少しご紹介していきたいと思います。
相続放棄とは、民法で定められた法律行為であり、家庭裁判所へ申し立てることで、初めから相続人ではなかったものとみなされます。
【民法938条】 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
【民法939条】 相続の放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなす。
ですので、自分ひとりで宣言したり、ほかの相続人に対して意思表示をするだけでは法律上相続放棄をしたことにはなりません。家庭裁判所への申し立てが受理されてはじめて法律上の効果が発生していきます。
さらに、相続放棄の申し立てには期限が設けられています。原則は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内となっています。
原則は3か月となっていますが、家庭裁判所に申し立てることで期限を伸長してもらえたり、3か月を経過した場合でも特別な事情があったときは相続放棄ができる場合もありますので、そのような状況にある方は一度専門家に相談してください。
なお、3カ月経過後の相続放棄については、通常の相続放棄のように簡単には認められません。経験のある専門家に依頼される方がいいと思います。
ただし、相続放棄しようと思っていても、被相続人の財産を売却してしまったり、借金を相続人として支払ったりされると相続を承認したものとして相続放棄が出来なくなります。法律上、以下のような規定になっています。
【民法第921条】
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
2.相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
3.相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
相続人が相続財産について「処分行為」をした場合は、単純承認したもとのみなすというのは、
・被相続人名義の車や不動産などを売却した
・預貯金を引き出して、自分のために使ってしまった。
・被相続人の遺産分割協議をした、
こういったケースが考えられます
【民法915条】 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
相続放棄が認められれば、はじめから相続人ではなかったとみなされるわけですから、プラスになる財産も相続できませんし、借金などの負債も相続しません。遺産分割協議の参加対象にもなりません。
そのため、相続放棄をするケースとして多いのは、相続するプラスの財産(資産)よりもマイナスの財産(借金・負債)のほうが多いことが明白である場合かと思います。
その他のケースとしては、遺産分割協議に参加したくない場合、複数の相続人がいるときに特定の相続人に相続させたい場合などに行われることもあります。
しかし、自分で調べた知識だけの思い込みで相続放棄を行うと、後々思いもよらない事態になってしまうこともあります。いったん相続放棄をしてしまうと、原則特段の事情がないかぎり撤回をすることはできません。
それを安易に認めてしまうと、他の相続人や第三者の利害関係人の地位が不安定なものになってしまうからです。このことで当事務所にも相談に来られたケースがあります。
少し長くなりましたので、今回はこの辺りで終わりまして、次回は相続放棄をして困ったことになった事例を紹介していきたいと思います。
最後までご覧頂きましてありがとうございます。