以前紹介した遺言についてのブログ「相続で将来争わないための対策」について解説いたします。
前回の投稿で、遺言は遺言者の最終の意思表示であるとお伝えしました。しかし、すべての物事に対して意思表示の効果を与えられるかというと、決してそうではありません。
遺言で法的な効力を与えられる事項は法律で決められているのです。これは法律で定められた事項以外の内容を書くことを妨げるものではありませんが、法律で定められている事項以外の内容については何の法的な効力も及ばないということを意味しています。
遺言で法的な効力を与えられる事項は下記の4つに大別されます。
・相続に関する事項
・身分に関する事項
・その他
それでは1つずつ見ていきましょう。
●相続人の相続分を指定すること(法定相続分と異なった割合を決めること)。又はその指定を第三者に委託すること。(同902条1項)
●遺産分割の方法を指定すること。又はその指定を第三者に委託すること。(同908条)
●遺産分割を一定期間禁止すること(相続開始時から最長5年間)。(同908条)
●相続人が遺産分割によって取得する財産に過不足または瑕疵がある場合の相続人の担保責任を指定すること。(同914条、911~913条)
●遺贈の減殺の方法を指定すること。(同1034条)
●一般財団法人設立のため財産の拠出をすること。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)
●財産の譲渡などの処分をし、または一定の目的に従い他人に財産の管理、処分などをさせること(遺言信託)。(信託法2条、3条2項)
●生命保険金の受取人を指定し、または変更すること。(保険法44条)
●未成年後見人を指定し、または未成年後見監督人を指定すること。(同839条、848条)
●お墓、祭具、系譜などを承継してこれを守る人(祖先の祭祀主宰者)を指定すること。(同897条1項)
上記の事項が遺言で法的な効力を与えられるものになります。
これに付け加えて法的な効力を与えるものでない遺言者の心情的な記述(付言事項といいます)を遺言書に記載することも可能です。「家族仲良く助け合って生活してください」「遺産分割で争わないでください」など、残された相続人等に対して伝えたいメッセージがある場合は、一緒に遺言に記載しておくのもいいでしょう。
以上、2回にわたり遺言についてご紹介してきました。遺言は、遺産の処分方法が明確になり、相続人間の争いを未然に防ぐ手段になります。
ただし、遺言を残しているからといって、絶対に相続の揉め事がすべて予防できるものではありません。その遺言内容をめぐって親族の関係が悪くなることもあるかもしれません。
また、遺留分(一定の範囲の相続人に認められる最低限度の遺産取得分)はたとえ遺言を残していたとしても侵害することはできません。遺留分を請求される可能性が高い場合、あらかじめ遺留分のことも考えた内容にしておいたほうがよいケースもあります。
実際に今まで、専門家の目から見て、遺言書の作成だけでは将来の紛争を防ぐことが出来ない案件が多々ありました。
また、遺言書を作成しておけば争いが発生しなかった、というケースもありました。
遺言書作成のご相談をいただいて、もし、そのままでは将来争いが発生する可能性がある場合には、できる限り将来の紛争を予防する方法を提案させていただきます。
不動産登記や会社の登記手続きと異なり、遺言書作成は相談する専門家の経験値が非常に大事になります。
依頼される専門家によって、全く異なるスキームができあがるケースもあります。セカンドオピニオンとしても対応させていただくことは可能ですので、遺言書作成を検討されている場合には、是非、ご相談下さい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。