自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)とは、「遺言者が、全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と、民法968条に規定されています。遺言書はパソコンなどを使わずに全て自分の手で書かなければ無効となりますが、特別な手続きを必要としないことから、遺言方法としては公正証書遺言と共によく利用されています。
自筆証書遺言はその名の通り、自分で遺言書を作成する方法です。紙とペンさえあれば作成できるので費用はかかりません。とても簡単に作成できます。
しかし、遺言書を見つけた親族は家庭裁判所の「検認手続」を行う必要があるなど、多少の手間がかかります。2020年7月10日から始まる遺言書保管制度を利用した場合には、家庭裁判所おける検認手続きは不要となります。
自筆証書遺言を作るためのポイントをまとめましたので、これから遺言を作成する場合には、ぜひご確認ください。
この記事の目次
財産を誰に渡すのかまとめておく
遺言書を作成するということは、自分死後の遺産を誰に何をどれだけ相続させたいのか、正確にまとめておく必要があります。まずは自分の財産が何がどれだけあるのかを計算しておきましょう。遺言書は遺族にとっても重要なものです。遺言書に書かれていない財産がある場合には遺族間で紛争が発生することがあります。
自分の死後、相続人間での紛争を予防するために財産の一覧表を作成してみましょう。そして、その財産を現在または将来において、誰が利用することが最もいいのかを想像してみましょう。そのように一つ一つの財産について考えた上で遺言書を作成していくと紛争が生じる可能性が低くなります。東京に居住している相続人が北海道にある広大な面積の田や畑を相続しても相続した方が困るだけでなく、田畑が荒れてしまって、資産価値が低くなってしまう可能性があります。
遺言書を作成する時は、まずは将来の利用状況を想像してみることが大事です。
また、相続人の遺留分を侵害しない範囲で遺産分割の指定をすることを心がけるといいでしょう。
相続財産を正確に-遺言執行できるように
どの財産を誰に相続させるのかということも非常に重要ですが、遺言書に書かれている財産がどの財産を指定しているのかを誰が見てもわかるように書きましょう。例えば、土地を所有していた場合で遺言書に「北側の土地は長男に、南側の土地は次男に相続させる」では、遺言の執行はできません。
「京都府宇治市広野町一里山〇〇番〇〇 宅地 500㎡の土地は長男法務一郎(昭和33年3月3日生)に相続させる」
このような記載にすると完璧です。
せっかく、作成した遺言書が結局は使えなかった、というような事にならないように正確に丁寧に作るようにしましょう。
財産目録以外は全文を手書きで書きましょう
2019年1月13日の法律改正により自筆証書遺言の方式が緩和されました。今までは「その全文、日付及び氏名を自書し」という規定になっていましたが、財産目録を別紙として添付する場合には、財産目録に関しては、パソコンで作成したり通帳のコピー、登記事項証明書を添付することが認められるようになりました。但し、〇〇に相続させる等、財産目録以外については従来どおり、手書きで書く必要があります。代筆、音声、映像などで遺言書は従来通り作成はできません。ビデオ映像による遺言は遺言としての効力はありませんが、相続人に対してのメッセージとしてはいいと思います。
ボールペンなど消すことが出来ないもので財産目録以外は全文を自筆で日付・氏名まで、押印も忘れずに
自筆であれば鉛筆でも筆でもボールペンでも構いませんが、偽造を防ぐ意味から鉛筆などは避けましょう。財産目録を別紙をとして添付する場合以外は、遺言書を作成した日付及び氏名まで全文を自筆で書きましょう。押印を忘れてはいけません。押印がないと無効になります。実印を押さなければいけないということはありませんが、将来、遺言の有効性を争われることがないように実印の押印をおすすめします。
丈夫な紙を用意しましょう
法務局での自筆証書遺言の保管制度は今のところ始まっていません。遺言書はこの紙に書かないいけない、といった規定はありませんが、耐久性の観点からできれば和紙などを選んでいただくことがいいと思います。縦書きでも横書きでも大丈夫です。
法律改正が予定されています-自筆証書遺言の保管制度がはじまります
近々法律改正が行われ、2020年7月10日より自筆証書遺言の保管制度がはじまります。
これまでは、自筆証書の遺言書は、保管の方法や発見されない、などの問題がありました。
今後は、国の機関である法務局に遺言書を預けることで、偽造、紛失、遺言書の隠匿防止、存在の把握等が容易になります。
遺言書の保管の申請は、遺言者の住所地、本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地 左記いずれかを管轄する法務局に対して行うことになります。
夫婦がそろって遺言書を作る際の注意点
ご夫婦がそろって、遺言書を作成することがよくありますが、法律の規定で一枚の用紙に二人が遺言書を書くということは認められていません。別々の紙に遺言を書きましょう。
保管上の注意点
遺言書を保管する方法も大事です。自筆証書遺言は公正証書遺言と違い、作成されたその一つの遺言書しかありません。紛失したり、誤って捨ててしまうようなことがないように大事に保管しましょう。ただし、誰にも見つからないようなところに隠してしまうと、相続が発生した時に相続人が遺言書を発見できなかった、ということにもなりかねませんので、信頼できる人にはどこに遺言書を保管してあるかを伝えておくことが大事です。
自筆証書遺言の保管制度が始まり、遺言書保管所で保管してもらうまでは遺言書は大切に保管する必要があります。
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