もしも突然にご家族が事故や病気で亡くなってしまったら、遺言書もなく、誰も遺産の内容を把握していない場合においての財産調査は、かなり困難を極める可能性があります。
最近は、ネット銀行の方が金利がよかったり、ネット証券の方が手数料が安い、買い物についてもネット通販で自宅に送ってもらう、というように金融行動の全てをインターネットでまかなえるようになってきています。クレジットカードでお買い物をネット決済していても、遅れて送られてくる明細書を確認しないと把握できません。郵便物などのチェックも定期的に行う必要があります。
被相続人の財産の全貌がわからない場合の相続手続きでは以下の不都合が生じます。
・遺産分割協議ができない
・相続発生から3ヶ月経過すると相続放棄ができなくなる
・相続税の計算ができない
*死亡日の翌日から10カ月以内に行う相続税の申告を怠ると、無申告加算税や重加算税
といったペナルティが発生することもあります
被相続人の死後、3ヶ月経過してしまうと財産調査の結果が借金などの負債がプラスの財産より大きいことが判明しても相続放棄をすることができなくなります。それを防ぐには家庭裁判所に熟慮期間の伸長の申立てをする必要があります。申立てをした場合には約1~3ヶ月程度の熟慮期間が延長されます。
相続税の基礎控除とは、相続税を計算する上で課税対象になる財産総額から相続税がかからない遺産額のことです。被相続人の財産総額(注)が基礎控除額の金額より少ない場合は相続税は発生せず、税務署への申告も不要になります。
(注)財産総額には、みなし相続財産、被相続人死亡前の相続人に対する生前贈与、相続時精算課税制度による生前贈与を金額を含みます
相続税の基礎控除額の金額は、次の計算式で計算します。
相続税の基礎控除額=3000万円 + 法定相続人の人数 × 600万円
基礎控除額の計算では、法定相続人の人数を正しく把握することが大事です。
法定相続人の数を1人間違えてしまうと基礎控除額が600万円も変わってしまい相続税が発生するかの判断に影響が出てしまうので自分で進めていて不安になった場合は迷うことなく専門家に相談をしましょう。
法定相続人の範囲
婚姻届けをしている被相続人の配偶者は常に相続人となります。内縁関係にある夫や妻(事実婚も同様)は法律上の相続人とはなりません。
次に該当する人がいた場合、その人も法定相続人となります。
①被相続人の子(養子も含まれます)(注1)(注2)
②被相続人の両親などの直系尊属
③被相続人の兄弟姉妹(注3)
法律では優先順位が定められており、①の該当者がいなければ②、①②の該当者がいなければ③という順番で法定相続人が決まります。
(注1)被相続人の子が被相続人より先に死亡している場合でその子に子ども(被相続人の
孫)がいる場合には、孫も法定相続人となります
(注2)被相続人に実の子がいる場合、養子は一人、実の子がいない場合には養子は二人ま
で法定相続人の人数としてカウントします
(注3)被相続人の兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合には、兄弟姉妹の子につ
いても法定相続人となります
この記事の目次
相続税の期限内申告
相続税の申告は、相続または遺贈により取得した財産(被相続人の死亡前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産を含めます)および相続時精算課税の贈与により取得した財産の額(贈与時の価額)の合計額が基礎控除額を超える場合に必要です。
また、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっていますが、財産の全貌が把握できなかったとしても遺産の調査を行い、できる限り真実の遺産内容を反映した相続税の申告および納税をする必要があります。
相続税の申告期限までに遺産分割が整わない場合には、共同相続人が法定相続分で相続をしたものとして相続税の計算をします。
しかし、相続人が被相続人と疎遠であった場合には、被相続人の生前の財産状況が不明で、相続税の計算に必要な財産の調査が難しい場合や、相続税の課税価格に加算される相続開始前3年以内に被相続人から相続人に行われた生前贈与を確認できないこともあります。
このような場合であっても、相続税法には、申告の猶予を認める規定は設けられていません。つまり、相続人はできる限り被相続人の財産について調査をし、相続税の納税義務があると認められるような場合には、申告期限内に相続税の申告をする必要があります。
財産調査の方法
生前の財産調査の方法は、困難ではありますが個人で調べることも可能です。では、生前ではなく、亡くなった後つまり相続が発生してからの財産調査にはどのような方法があるのかを解説をします。
財産調査
・預貯金・有価証券(株式・債券・投資信託など)
・不動産(宅地、家屋、山林、農地など)
・生命保険
・ゴルフ会員権
・借金(負債)
*その他にも被相続人の方が貸金庫を契約されている場合には不動産の権利証や株券などの重要な書類が保管されている可能性があります。貸金庫を開けるには相続人全員の同意と戸籍及び印鑑証明書の提出が必要です。
預貯金・有価証券(株式・債券・有価証券)の場合
金融機関や証券会社では残高証明書というある日において、その人がその金融機関に預けている資産の一覧表を発行してくれます。銀行や信用金庫、信託銀行などは有料となっており金融機関により手数料も異なっています。
残高証明書を請求する日付は相続が発生した日(亡くなった日)にしておくと、相続税申告がある場合の添付書面としての利用が可能です。
しかし、不動産と同様に日本全国のどこの金融機関にどのようなものを預けているかを照会する仕組みはありませんので注意が必要です。
通帳やキャッシュカード、各金融機関などからの手紙、ネット銀行やネット証券の場合には、スマートフォンやパソコンのアプリなどを参考に調査をしていきましょう。
照会(請求)に必要とされるもの
・亡くなった方の死亡の記載がある戸籍謄本
・照会(請求)者が相続人であるとわかる戸籍謄本
・照会(請求)者の身分証明書
※金融機関の残高証明書の請求には請求者の印鑑証明書が必要です。
不動産の調査の場合
権利証や登記簿謄本(登記事項証明書)があれば、すぐにわかりますが、見当たらない場合や被相続人の実家に山林や農地があると推定される場合には、名寄帳(なよせちょう)を市役所に請求します。
名寄帳とは固定資産税を徴収するために市町村が作成している固定資産税課税台帳をまとめたもので、この名寄帳を請求することによって市役所ごとに請求する必要がありますが、所有する不動産が判明します。
しかし、日本全国のどこに不動産を持っているか、ということを照会する制度みはないので、どこの市町村に不動産があるかわからないという場合は、自宅のある市役所や実家のある市役所などあたりをつけて請求することになります。
なお、非課税の不動産(公衆用道路など)は、課税明細書や名寄帳に記載されない場合もあるので、法務局で公図を取得して調査をする必要もあります。
もしも私道かもと思う土地があったら、その登記簿謄本を取得して所有者を調べてみるといいかもしれません。
預貯金・有価証券(株式・債券・有価証券)の場合
金融機関や証券会社では残高証明書というある日において、その人がその金融機関に預けている資産の一覧表を発行してくれます。銀行や信用金庫、信託銀行などは有料となっており金融機関により手数料も異なっています。
残高証明書を請求する日付は相続が発生した日(亡くなった日)にしておくと、相続税申告がある場合の添付書面としての利用が可能です。
しかし、不動産と同様に日本全国のどこの金融機関にどのようなものを預けているかを照会する仕組みはありませんので注意が必要です。
通帳やキャッシュカード、各金融機関などからの手紙、ネット銀行やネット証券の場合には、スマートフォンやパソコンのアプリなどを参考に調査をしていきましょう。
生命保険の場合
保険は、保険会社から送られてくる保険証券やハガキなどの資料をもとに、契約の有無を把握します。保険契約をしていたという情報だけでは十分ではないので解約返戻金(見込額)証明書などの資料を保険会社から取り寄せることが必要になります。
生命保険会社のカレンダーや名刺などがあった場合には、その生命保険会社に対して問い合わせをしましょう。
ゴルフ会員権
会員が死亡すると資格喪失するとの規約がない限り、相続財産となります。この場合、会員権の名義変更を行う必要があります。
被相続人が特定のゴルフ場へよく行っていたということわかっている場合には、会員権の有無について調査が必要です。
債務(借金)
債務(借金)については、債権者との間での金銭消費貸借契約書や返済予定表の有無や消費者金融からの督促状など、故人の自宅や郵便受けなどを見て確認します。その他にも故人の通帳に定期的な引落し(返済)がないか、また銀行振込の控えなどを探すことも有益です。JICC、CICなどの信用情報機関、全国銀行協会等に照会するという方法もあります。
期限内に申告・納付しなかった場合
相続税の申告期限までに申告や納付がされなかった場合には、原則として無申告加算税や延滞税が発生してしまいます。
申告期限までに申告をしなかったことに正当な事由がある場合には、加算税は賦課されません。相続税の申告期限までに遺産の全容が全て明らかにならなかったとしても、その時点で判明している遺産の額が相続税の基礎控除額を超えることが判明していた場合には、判明している範囲で申告をしましょう。税務署はマイナンバー制度も導入されているので、相続人より被相続人のお金の収入について詳しく把握していると考えておいた方がいいかもしれません。