この記事の目次
現在における贈与税の非課税枠
現在における贈与税の非課税枠は以下のような制度があります。
1.暦年課税の110万円控除
2.相続時精算課税制度による2500万円
3.居住用不動産における夫婦間贈与の特例2000万円
4.住宅取得資金贈与 非課税の特例1200万円もしくは700万円控除
5.教育資金贈与1500万円
6.結婚子育て資金贈与1000万円
7.障害者への贈与6000万円
1,2の制度については贈与する財産に制限はありません。
3については受贈者が居住している不動産についてもしくはその購入するための資金の贈与です
4については受贈者が居住する不動産の購入資金の贈与です
5,6,7については信託制度を利用した非課税制度となっています
暦年課税制度における110万円控除
かなりの方がご存知なのですが、1月1日~12月31日に一年間に贈与する暦年贈与では、贈与された人1人あたり年間110万円までは贈与税が非課税となります。
そして、税務署に申告する必要もありません。
贈与をする側(贈与者)に金額の制限はありません。もらう側(受贈者)が年間110万円以内であれば、毎年贈与を受けても贈与税の課税はありません。
例えば、祖父から孫3人への贈与を年間110万円ずつ5年間行いますと、
110万円×3人=330万円
330万円×5年間=1650万円 となります
祖父の財産をたった5年間で1650万円も減らすことが出来ました。
誰にも税金はかかりません
贈与する財産にも制限はなく、不動産、有価証券、現金、骨董品など、何でもOKです
デメリットとしては、資産が多い方についてはあまり効果が出てこない、ということがあげられます
50億円の資産がある方が110万円ずつ贈与をしてもさほど、財産を減らすことが出来ません。
ただ、この非課税枠を使って、複数年かけて贈与をされる方は結構多いです
ありがたいことに、申告の必要はありません。
注意点
①贈与というのは、贈与者と受贈者の契約です。
子供が幼いころから親が管理している子供名義の通帳に毎年110万円振り込むというのは、贈与契約は成立していません。(親の名義預金として取り扱いされることになります)
これだけは覚えておいてください
生前贈与の3年内加算
生前贈与の3年内加算のルールというのがあります
相続または遺贈により財産を取得した人が、亡くなった人から、亡くなる前3年以内に贈与を受けた財産については、その贈与はなかったものとして相続財産に戻され、相続税が計算されます。
但し、このルールが適用されるのは相続または遺贈により財産を取得した人が対象になるため、お孫さんに贈与されるケースが多いようです。
他の税金は非課税にはなりません
一般の方に多いのですが、
「贈与税が非課税になる」をいつのまにか「すべて非課税」と勘違いして、他の税金の存在を忘れていらっしゃる方がいらっしゃいます。
贈与税が非課税であっても、不動産取得税、印紙税、登録免許税などは、非課税にはなりません。
専門家に依頼された方は、当然説明を受けているとは思いますが、ご自分で登記手続などまでされた場合には、思わぬ金額の税金がかかるケースがありますよ。
相続時精算課税制度による2500万円
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親又は祖父母が好きな時に2500万円までのまとまった財産を20歳以上の子又は孫に贈与しても贈与税がかからない制度です。
ただし、説明をしていきますが、基本的には財産を減らすことにはなりません。
よほど、これから先、値上がりし続ける不動産であれば、話は別ですが
この制度は
生前贈与をしたときに2500万円まで贈与税は非課税になりますが、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税の課税対象になります
ようするに、今年父親から2000万円の財産を長男が生前贈与を受けても、今年は贈与税がかからないが、将来父親が死亡した時に父親の遺産に今年もらった2000万円を合算して計算して下さい、という制度です。
贈与財産の種類、金額、贈与回数、年数に制限はありません。
不動産、有価証券、現金、骨董品など、何でもOKです
複数年に渡って、贈与することが出来ます
この制度を利用するメリットってないんじゃないか、と思われるかもしれませんが、ありますよ。
相続時精算課税制度利用モデル
ケース1.父親が亡くなって、母親が相続した自宅があります。
母親は再婚で離婚した前夫との間にも子供がいるが、その子供は音信不通。
母親の面倒を看ている二回目の結婚時の子供に相続させたい。
行方不明の子供との間で遺産分割協議は期待できそうにない
こういったケースでは威力を発揮しますね。相続税対策にはなりませんが、争族対策にはなりますね。
母親と二度目の結婚のときの子供との間で相続時精算課税制度を利用して、不動産の生前贈与をしておけば、少なくとも自宅については、名義を変更することができます。もちろん、2500万円までは非課税で生前贈与することができます。
他にも、相続時精算課税制度の利用方法として考えられますのが、
ケース2.父、母、長男、長女、4人という家族構成の場合で
自宅不動産については、将来長男に相続させたい、長女にあげる不動産が他にはなくて、このままでは不公平になってしまうなあ、といったケース
長女が結婚、子供ができて、家を購入しようか、といった場合に長男に相続させようとしている自宅と同じぐらいの金額を相続時精算課税制度を利用して、長女に現金を贈与してあげる。といった、利用方法が考えられます。
このような使い方をすると、将来子供たちに争いが生じることを未然に防ぐことができるかもしれません。
夫婦間贈与の特例 2000万円
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で一度限り、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円以外に2000万円まで控除できるという特例です。
2110万円まで非課税で贈与をすることができますので、非常に大きい相続税対策になります。
ポイントとしては
①婚姻期間20年以上経過の夫婦であること
②居住用不動産もしくは居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること
③同一の夫婦間で一度限りであること
④申告をすること
不動産の贈与の場合の土地の評価は、贈与をする年の路線価により判断します。建物については、その年の固定資産税評価額により判断していきます。
新築時に請負代金を贈与される場合も多くありますが、将来の相続税対策の視点から判断していきますと、請負契約代金が3000万円で、そのうちの2000万円を贈与した場合は、建物全体の3分の2しか贈与できません。
新築した年の翌年4月1日以降には、建物の固定資産税評価額が出ます
この評価額は請負代金相当額が出ることはなく、必ず金額が下がっています
仮に1000万円の評価額が出ていた場合であれば、建物1000万円全体と、その敷地についても居住用不動産として非課税で贈与できます。
というように、評価が下がってから贈与をされるケースもよくあります。
直系尊属からの住宅取得資金贈与 非課税1200万円もしくは700万円、どっち?
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税という制度、これもよく使われる制度です。ただ、少しわかりにくいですね
一般的な住宅と省エネ住宅の2種類用意されている、ということです。さらに、わかりにくいのが請負契約を締結した時期で非課税金額が異なるということですね。
では、みていきましょう
平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。
(国税庁ホームページより)
この特例を使って、住宅を新築される方は非常に多くいらっしゃいますね。
但し、新築する住宅が省エネ住宅なのかそれとも違うのか、によって、非課税となる金額が異なります。
省エネ住宅とは
省エネ等住宅とは、省エネ等基準(①断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること又は③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること)に適合する住宅用の家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます。
そして、上記建物の条件にあてはまらない住宅が、それ以外の一般的な住宅となります。
非課税となる金額
平成28年1月1日から平成32年3月31日の間に契約を締結した場合
省エネ住宅は1200万円
それ以外の一般住宅は700万円 まで非課税となっています。
ポイント(一定の要件)
①贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋を新築して居住すること、もしくは、遅滞なく居住すること(12月31日までに居住していない場合には、この特例は使えません)
→贈与を受けて建築が2年後、というのはだめです
②床面積50以上240
以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住用であること
→贈与受けた方が住むための家でなければいけません。受贈者の子供が住む✖ 別荘にする✖ ゲストハウス✖です
③居住用建物の敷地の取得費用にあてることもできます
→ただし、建物に名義を必ず入れる必要がります
④一定の親族から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、請負契約をしていないこと
⑤贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること
→一時居住者等の例外があります
⑥贈与を受けた年の翌年に必ず税務署に申告をすること
→贈与を受けた年の2月1日から3月15日の間です、1日でも遅れるとだめですよ
⑦生前贈与の3年内加算のルールの対象外です
→贈与してから3年以内に贈与者が亡くなっても相続財産に戻されることはありません
教育資金贈与1500万円
教育資金贈与の特例とは30歳未満の人の教育資金にあてるために、その親や祖父母が金銭等を出し金融機関に信託等をした場合には、受け取る人1人につき1500万円(うち学校等以外のものについては500万円)までは非課税になるという制度です。
ポイントは3つ
①孫1人あたり贈与してもらえる金額は1500万円まで
②金融機関等に、教育費として使用した領収書を提出する必要があります
③30歳に到達する日までに使いきれなかったら、残額に贈与税が課税されます
教育資金の範囲
①入学金、授業料その他の金銭で一定のもの
→修学旅行費、給食費、ノート、教科書等の購入費用も含まれます
②学校等以外の者に、教育に関する役務の提供として直接支払われる金銭その他の教育を受けるために直接支払われる金銭で一定のもの
→塾、習い事、予備校、部活動費、定期券など
残額が出たとき
翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告をしなければなりません
*この制度は平成31年3月31日までの時限立法となっています
結婚子育て資金贈与 1000万円
直系尊属(父母や祖父母)である贈与者が、20歳以上50歳未満の子や孫に対して結婚・子育て資金を一括贈与し、金融機関のその子や孫の名義の口座に預入れた場合、1000万円までを非課税とする制度です。
結婚・子育て資金
①結挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用 300万円が限度
②家賃、敷金等の新居費用、転居費用
③不妊治療、妊婦健診に要する費用分べん費等、産後ケアに要する費用 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料
受贈者が50歳になったとき、もしくは死亡したとき、口座残高が0円になったら契約終了させる合意があったときに0円になった場合に終了します。
*この制度は平成31年3月31日までの間の時限立法です
障害者への贈与
特定障害者の方の生活費などに充てるために、一定の信託契約に基づいて特定障害者の方を受益者とする財産の信託があったときは、その信託受益権の価額のうち、特別障害者である特定障害者の方については6000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方については3000万円まで贈与税がかかりません。
特別障害者とは
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている人
いつも病床についていて、複雑な介護を受けなければならない人
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人で障害等級が1級と記載されている人
身体障害者手帳に身体障害者として記載されている人で障害の程度が1級又は2級と記載されている人
精神保健指定医などにより知的障害者と判定された人で重度の知的障害者と判定された人
の方が該当します
いろいろと非課税制度があります。ときどきチェックして、ご自分のライフプランに該当する制度があれば利用することを検討してみてください。