共同相続人の中には、被相続人の生前、その財産の形成に協力し、その増加に影響するような貢献をした相続人もいれば、何も貢献しなかった相続人もいます。貢献した相続人のおかげで、被相続人の財産が増加して、その恩恵を受けているにもかかわらず、貢献した相続人と貢献しなかった相続人とが相続する財産の額が同じで形式的な法定相続分しか受け取れない、というような不公平を是正するために設けられた制度です。
具体的には、相続人の中に貢献した者がいる場合には、遺産分割協議において、貢献した相続人が相続する分を貢献した程度に応じて相続分以上の財産を取得させましょう、という制度です。
ココガ大事➝寄与分は法定相続人しか主張できません。つまり、家族関係が次のような構成の場合に、子供(次郎)が遠方に居住しているから、父親(太郎)の財産管理や看病を太郎の兄弟(一郎)が頑張ってしたとしても、一郎は、次郎がいるかぎり太郎の相続人にはなれませんので、寄与分の請求はすることができません。離婚した元妻、内縁の配偶者、子供の配偶者なども法律上の相続人ではありませんので寄与分の主張は認められません。
このケース、トラブルを避けるためにも、太郎は生前に何かしらの対策をしておくべきでした。
この記事の目次
太郎の取っておくべきだった対策
■太郎が一郎に対してお金を生前に贈与する
■太郎が遺言書を作成して一郎に対して財産を遺贈する
など、生前に対策をしておけば、太郎の子供次郎も一郎に対して、負い目を感じることなく財産を相続することが出来たでしょう。
次に、相続人が被相続人に対して貢献をしていた場合とはどういった場合かを見ていきます。
寄与分が請求できる具体的な行動
■被相続人の看病を長い間無償でおこなった
■被相続人の老後の介護を長い間おこなった
■被相続人の負債の支払いや財産管理を長い間おこなった
■被相続人の事業を無償で手伝った
こういったケースであれば、寄与分として認められる考えられます。
被相続人の事業に関する労務の提供
被相続人が事業をしていた場合に、無償で事業のお手伝い、被相続人の財産増加に貢献(寄与)した場合です。給料をもらっていた場合には特別の寄与とは認められません。
被相続人の事業に対する財産の出資
被相続人に金銭等の財産を出資した場合です。例えば、被相続人に借金があって、返済のためにお金を出したような場合が該当します。
被相続人の療養看護
相続人が被相続人の療養看護を行った場合です。看護をしただけでは該当しません。相続人が介護をしたことによって、施設入所せずにすんだ、といったことであれば財産の維持に貢献したと考えられます。亡くなる1週間ほど自宅で介護をした、ということであれば、特別の寄与があったとは認められません。また、夫婦間においては、同居、扶助、協力義務がありますので、通常の療養看護であれば、認められにくいでしょう。
寄与分がある場合の遺産分割の計算方法
寄与分がある場合の遺産分割の計算方法ですが、まず相続財産を確定し、相続人お間で遺産分割協議を行います。
寄与分があると認められた場合には、相続財産から寄与分として認められた額を引きます。
残った、財産を遺産分割協議で分配していくことになります。
具体的な事例でみますと
通常の法定相続の場合
被相続人の遺産 5000万円の現金だけ
相続人 A、Bの2人
通常の法定相続分で分けるのであれば、2分の1になりますのでAB共に2500万円ずつ相続する事になります。
Aに寄与分が認められ、残りを法定相続にする場合
Aに寄与分が500万円認められた場合には、5000万円から500万円を引きます。残り4500万円をAB2分の1ずつ分けます。
5000万円-500万円(Aの寄与分)=4500万円
4500万円×1/2=2250万円
Aの相続できる財産 500万円+2250万円=2750万円
Bの相続できる財産 2250万円となります。
ココガ大事➝寄与分が法律上認められた場合でも相続税法上は、とくに控除があるわけではありません。実際に取得することになった財産額に応じて納税義務が発生することになります。