前回「取締役会 編」に続き今回も会社の機関についてご紹介していきます。
今回は、監査役についてお話ししていきます。
そもそも監査役とは何か?
法律では次のように定められています。
【会社法第381条1項】
監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。
つまりは読んで字のごとく、取締役、会計参与といった役員の職務を監査し、会社を経営する上で違法又は不当な職務執行がないかどうかを調査して、もしそのようなことがあればそれを阻止する役目を担う機関です。
株主の監査と同時に、又は代わりに会社の業務執行を監査します。
取締役が複数名いる会社であれば、取締役がお互いの業務を監査し合うことが望ましいですが、やはり馴れ合いが発生したりとうまく機能しない場合があります。そのような場合に、監査役が必要となってくるかと思います。
監査役を設置するかどうかは任意となっています。しかし、取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く、公開会社ではない会計参与設置会社を除く)と会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)には、必ず置かなければなりません。公開会社(株式の譲渡制限を設けていない会社)は必ず取締役会を設置しないといけませんので、監査役の設置義務があります。カッコ内の会社に監査役の設置義務がない理由は、設置された機関に、監査役の職務を行う役が設けられているためです。(会社法第327条2項、3項、4項参照)
監査役は、株主総会で選任され、会社の業務執行の監査を行うために必要な下記の権限を与えられています。
・取締役や従業員に対して事業の報告を求め、監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすること(会社法381条2項)
・監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、その子会社の業務及び財産の状況の調査をすること(同381条3項)
・必要があると認めるときは、取締役会の招集を請求することができ、招集がない場合は自ら招集できる(同383条2項3項)
・取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる(会社法385条)
・会社が取締役(取締役であった者を含む)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合には、当該訴えについては、会社を代表する(会社法386条)
また、監査役会や会計監査人を設置していない会社で、非公開会社(株式に譲渡制限規定を設けている会社)の場合は、監査役の権限を会計監査に関するものに限定することができます。(同389条1項)
これは、同族会社や中小企業では株主が限定的で変動が少ない分、株主自身の業務に対する監査がある程度期待できるからだと言われています。
なお、監査役の権限を会計監査に限定している会社は、法律上監査役設置会社の定義に当たらないとされていますので、上述した監査役の権限である会社法381条から386条までの規定は適用されません(同389条7項)。同法389条2項~6項が適用されます。
監査役は、業務の性質上、公正性・独立性が求められますので、監査役設置会社の取締役、使用人、さらには子会社の取締役、執行役、会計参与、使用人を兼任することはできません。(会社法335条2項)
取締役等になれば、仲間意識から馴れ合いが生じる可能性が生まれ適切な監査ができない恐れがありますし、やはり独立性を保つことが難しくなります。子会社は、監査役の求めに応じて事業報告を行う立場にあり、その中に存する取締役等を兼任してしまうと、前述したような馴れ合い等で報告内容に疑義が生じる可能性も考えられ適切ではありません。
監査役を設置するメリット
・常勤の監査役を設置することで会社の内部事情に詳しいため業務監査によって会社の問題点を発見しやすくなります
・非常勤の監査役を設置することで、その会社の考え方にとらわれずに、外からの視点を持って監査を行うことができます
・専門家(司法書士等)を招くことによって、法務分野で強みを持つことが出来ます
家族経営で会社を経営しておられる方は、監査役についてあまりなじみがないという方も少なからずおられると思いますが、会社の機関には色々あるということが伝わればうれしい限りです。
以上、監査役についてのご紹介でした。ありがとうござます。